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当たり外れ
楽器の世界で良く言われるのが「当たり」「外れ」という表現なんですが、私はこういう言い方は好きではありません。
そうではなくその楽器が「その人の好みに合っている」か「合っていないか」で「当たり」とか「外れ」では無いと思っています。
楽器から出てくる音がその人の嗜好や使用目的に合致するかどうかではないかと。
特定音域に優れた資質を持つものはありますが、オーナーの好みに適していなければピンと来ないでしょうし、場合によってはそれを「生かさない」方がオーナーに「良い」と評価されることもあります。
「でももともとフレット音痴だったり音詰まり起こしたりするものがあるじゃん」と言われるでしょうが、
そういうのは「当たり」とかではなく単なる「不良品」じゃないかと思うんですけど。

良く調整や点検で楽器を持ち込まれるお客様の中で完成時の試奏の時に、
「いやあ、前とは変わってずっと良くなりましたね」という方がいらっしゃいますがこれもちょっと違う気がします。
これは「楽器本来の能力をちゃんと発揮できるようにしただけ」で、本質を変えたわけではありません。
荒っぽい言い方をすれば「良くなった」のではなく「今までが良くなかった」だけなんです。
改造で意図的に能力をコントロールするのとは全く別の話ですよね。
楽器は全てにわたってバランスの世界ですから、構成する部品一つ一つが持てる能力をちゃんと発揮して初めて本来の力が出せるわけで、様々な原因でそれが阻害されている場合があるわけです。
私はそれを突き止めて排除、改善しているに過ぎません。
たとえ1個の部品が120の力を持っていたとしても他が100ならば楽器も100以上にはなりません。
逆に1個だけ90の部品が混じっていたら全体のパフォーマンスも90になってしまうのが楽器です。
そういうときの私の仕事はその90の部品を何とかして100に近づける行為というわけです。
それでもたどり着かなかったときは・・・・・私の力が足りないということです。


「生鳴りの音が大きいから良い楽器なんですよ。」というのも私には意味がわかりません。
エレクトリックの場合は判断材料のひとつの要素ではありますが、それだけで総合能力を判断できるほどの能力を私は持っていません。
確かに1本のギターを手がける過程の中で生では必ず弾いてみますが、それは前途したように
全体の振動の分布具合や到達の仕方、ハードウェアの状態などを確認するためのもので
それに対してどういう電気周りをどう組み合わせるかとか、現状のセッティングで良いものなのかとか、その後の方向を考えるための材料なんです、私にとっては。
勿論私が判っていないだけで勉強が足りないだけなのかもしれませんが未だにその根拠の片鱗すら見えていません。

私は楽器としてちゃんと成立しているもので100人中100人が「ダメ」という評価を出したものに過去出会ったことがありません。
(これも額面通り受け取られる評価なのかどうかも判りませんからホントにそうなのかもしれないしそうじゃないのかもしれないですけれども)
「多くの人」が良いと判断するものがあっても、「絶対的に」良いというものは存在し得ないんじゃないかと思いますね。


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